あおいあおいはなのように。儚い言葉、紡ぎ落として


by blueblue_darkrose

<   2006年 05月 ( 2 )   > この月の画像一覧

日常SS。

コッソリと、流した滴が泉に落ちる。その音は、かすか過ぎて、誰にも聞こえない。


ワタシタチと彼女

 ワタシタチはずっと彼女を見ています。だから彼女のことであれば、物語のように紡げるでしょう。

 ワタシタチはワタシであり、ワタシタチです。ワタシが生まれたのは静かな湖畔であり、砂漠の道端です。

 風にゆられ、時には獣の吐息に体を揺らしました。

 ともあれワタシが生まれたのはこのミッドガルドという大地。何れおとなう神々の黄昏のときを生きる住人。
 彼女もまた、そんな中の一人です。
彼女は――よく私たちの元を訪れます。ごく頻繁に。そしてワタシタチを摘み、薬を作る事を好むようです。
 魔法薬――ポーションと、そういうのでしょうか。ワタシタチがそれの原材料となっているためでしょう、彼女以外にもそういったものは多いです。自身で使うため、売るため、理由は様々ですが。そういった彼等彼女等は…ワタシタチの命をつんでいきます。

 今日もまた、彼女の手が、私たちを撫でて、その手に色とりどりの私をつかんでいきます。

これも、何時もの事

さて、ではこれより以降は彼女の手に移ったワタシから、紡ぐことにいたしましょう…


彼女の手が、幾つかの材料を選び取ります。このワタシは青い色です。

 黄色い結晶体と、ワタシと水が乳鉢の中で擦り合わされ、ろ過され、瓶の中へと詰められてゆきます。
彼女はあまり腕はよいほうではないのですが…ワタシは何とか使い物になると判断されたようです。中身は零されることなく瓶にコルクのふたがはめ込まれました。

彼女の手に摘まれたワタシタチは一人残らず擦り合わされ、精製されていきます。
やがて彼女の手が止まり、あとには半端な材料と硝子瓶に詰められた赤、黄、白、青の薬液が残されていました。

彼女はそれを半分は自身のカートにもう半分――特にワタシたち青い瓶は倉庫へと預けられました。かすかな寂寥を含んだ眼差しがワタシを掠め、そして次にはそれを隠すように奇声を上げて何処かへと行きました。大抵そういうときには共に連れるのは彼女が生み出した人工生命体一羽を連れるのみでした。

 幾許か時間が過ぎワタシタチは倉庫の中でまどろんでいます。彼女は定期的にワタシタチを作り、半分は売り、もう半分は倉庫に貯蔵する行為を繰り返しています。その理由はワタシでは分かりません。ワタシより長くここにいるワタシもしりません。ただ――

 清涼な空気と水と、力溢れる大樹の幹の一角で、佇む彼女がワタシタチに眼を向けることもなく何をしているのか、本当に知っているのは、ワタシタチだけなのです。
[PR]
by blueblue_darkrose | 2006-05-16 15:21
女の笑みは嫣然と
男の怒号は轟然と

女は舞を舞うように首を斬り飛ばし
                                                    阿鼻
男は振り下ろす腕で半身をひき潰した
                                                    叫喚

艶やかな黒髪が、血しぶきに濡れてしとる。
撓む肉が弾けたばねのように撃ちだされる。

「ふ、はは、大嶽、うれしやねぇ。久方ぶりの逢瀬が地獄絵図!そなたらしいというかなんというか」

にぃ、と紅唇が笑みを象る。婀娜な仕草で鉄扇を振り払い、こびりついた血漿を振り落とした。

「そういう九曜、おめぇはあいもかわらず隠居暮らしか。さすがろ―――」     老/婆
その言葉は形を作る前に、嫣然と微笑む女の手により引き裂かれた

「ほほほ、そなたの口の悪さも相変わらずだこと。けれど、けれどねぇ。口の悪さを向ける相手を誤るとは、珍しいことだぇ」

ぱしん!と大陸に渡り、武器として戻ってきた鉄扇が閉じられる。粘つく血は一挙動の内に振り払われた。
頬の肉をごそりともって行かれた大嶽は呆れたように溜息を一つ。筋骨粒々、黒々とした大男。
対するは婀娜な仕草の雅な女。

どちらも鬼。

屍山血河の上にて談笑。女が呟いたとおりにそれは久方ぶりの邂逅であった。

ほんの、一時の

「おう、九曜がこえぇ女なのを忘れていたな」怖い怖いと言っては、笑う。豪放磊落を絵に描いたような黒き鬼。
「しかしなぁ、久方ぶりにこっちに返ってきたとおもったら、出迎えつきたぁ、俺もちっとは名が知れてンのかね?」
血に濡れた拳を口許に宛がい頬を覆う。取敢えずの止血か。見た目では傷が塞がったように見えた。
 男に比べれば、小さく、人間とかわらないように見える女。たおやかな仕草で、口許に手をやり、楚々と笑む。
「謙遜するものではないえ、悪鬼大嶽の名は天地に轟いておるわ。だからこうして出迎えも容易い」

そうか。 男はそういって笑う。 そうじゃ。 女はそういって鉄扇を開く。
墨に塗りつぶされた夜が更け、白光が射す朝がはじまる。

むせ返るような血に酔うように潤んだ目を細め大嶽は呟いた
「つまらねぇな」
「つまらぬか」

「おうよ」
「ふふ」
                  光差し込みだす世界。自身を保つよすがを探すように視線を廻らせる。

「俺ぁ殺した。殺しつくした。殺して殺して――殺して。だから世界に。ココに殺される」
つまらねぇよともう一度呟く。
九曜は何も言わない。ただ耳を傾けた。同じように血にまみれながら、枯れた花のようにたたずむ女は、先にしおれる花を見た。

             光が世界を満たす。黒い鬼の姿が褪せる。彼のいる時間は光で埋まればもうどこにもない。

「何れ皆死ぬ。私も、空も、大地もココも、世界も」
慰めのような言葉にげらげらと下品に大嶽が笑う
「にあわねぇ」
「そなたもな」

お互いに、染み入った話は似合わないなと唇をほどく。静かな笑みがまだらの世界を満たす。

           滲みのように光が黒に穴を開ける。夜は駆逐される。更夜は黎明に殺される
噎せる花の香りに女は目を細めた。星の宿る夜の眸。

「んじゃ俺は飽きずに殺すか」
「私は好きなようにしよう」
「お前ぇは好きにしすぎ」
「白湯は美味いぞ、いつか月見湯でもしよう」
「酒は」
「ない」

情け無い叫びが最後に残った宵闇と一緒に、消えた。


***************
鬼って大すきーという一念の元、へろりとかいてみた。
九曜さんは、いい女なので大好きです!(自分のきゃらだけどありえないくらいに、佳い女なのですよ!
[PR]
by blueblue_darkrose | 2006-05-06 01:45